
サンテックの3つの魅力
地球規模で水が不足する時代がやってきている。
そして、このために経済活動や世界経済の発展に、水不足という自然の制約が歯止めをかけてくるだろう。
西暦二〇〇〇年に向けて世界が直面している問題の中でも、最も過小評価されている資源問題の一つが水の問題なのである。
世界の食糧需要、特に穀物需要は著しく伸びている。
毎年八、〇〇〇万人ずつ人口が増えていくだけでも、ニ、六〇〇万トンの追加穀物が必要になる。
発展途上国、特にアジアでは、一九九〇年代に急激に経済が発展し富裕層が急増したが、これによって食糧需要の伸びはさらに加速している。
穀物需要は史上最高の速度で増大している一方、収穫量の伸びは鈍化しているため、世界の穀物の繰越備蓄(次の収穫が始まる時点の備蓄量)は減っている。
一九九六年の穀物の繰越備蓄は史上最低となり、世界消費量の五一日分に落ちた。
これは、一九八七年のピーク時の半分以下である。
一九九六年、世界の主要な食糧生産国は例外的な好天に恵まれ、これまでにない豊作だったにもかかわらず、取り崩してしまった備蓄はほとんど回復されなかった。
一九九七年も同様で、豊作にもかかわらず備蓄レベルは戻っていない。
水不足による食糧不安もある。
食糧不安が急速にこの時代の決定的要因となりつつあるのだ。
海産物や肉、大豆など高蛋白質食物の需要が増えていることが、世界の食糧資源に対する圧力増大の主な原因の一つである。
この点で中国は、われわれの国の経済企画者や政治家の「目を覚まさせる」役割を担っているかもしれない。
最近中国は、穀物の実質的な輸出国から実質的な輸入国になってしまった。
従来確固たる自信を持っていた中国政府にとっても、これは大変なショックだった。
実際一九九五年に江沢民書記長は、中国の食糧不足は明らかになりつつあり、「農業の伸びが遅れていることから、インフレや安定性、国の経済発展に脅威を与える問題が生じる可能性がある」と警告をしている(『誰が中国を養うのか』)。
大局的に見れば、増大する人口に加えて、人々が食物連鎖を上の方へと上がっていくことから、食糧需要が急増し、アジア全体の政治や経済の安定が深刻な脅威にさらされる可能性がある。
ここでも中国は、人々が食物連鎖を上がっていったらどうなるかを示唆するショッキングな例となる。
貧しい人からみると、高蛋白質食品、特に肉を買えるというのは、経済が発展し生活のあかし質が向上した証だ。
一九九一二年に「生活状況はよくなってきたか」と尋ねられた中国内陸部の村人は、こう答えている。
「全般的に生活はずいぶんよくなってきた。
うちの家族は今では週に四回か五回は肉を食べているからね。
一〇年前には肉なんて食べたことがなかった」と。
しかし、一三億の人々が週に四回も五回も肉を食べるようになったらどうなるだろう?今日中国では、年に一人当たり四キログラムの牛肉を消費している。
一方アメリカは四五キロである。
もし中国がこの「牛肉のギャップ」を縮めようとしたら?一キロの牛肉を生産するには、通常七キロの穀物が必要である。
つまり、これだけの牛肉を生産するには約三億四、〇〇〇万トンの穀物が必要となるということだ。
これはアメリカの穀物の全収穫量に等しい。
もっとシンプルだが明らかな例を挙げよう。
もし、中国人が一年に四本多くビールを飲むことにしたら、ノルウェーの穀物収穫量を全部消費してしまうことになる。
そして、中国が日本人と同じ量の海産物を食べるようになったら、世界中の漁獲量すべてを食べ尽くしてしまう計算になる。
ここでは中国人を批判したり、その食生活について指図しようとしているのではない。
しかし、中国はその人口の大きさゆえに、他国をはっと気づかせてくれる事例になるのだ。
何であれ四億倍すれば、天文学的な数になる。
将来的には、食物連鎖を上がっていくのは中国だけではなく、約九億六、〇〇〇万人を抱えるインドなど、アジアやその他の発展途上国の何十億人も同様であろう。
どういうことになるのだろうか?穀物を輸入せざるをえない国がどんどん増えるということだ。
そのとき、だれが十分な量の穀物を生産できるのだろうか?最近の収穫の傾向が続くとすれば、残念ながら答えは明白だ。
食物連鎖を上ってアメリカ人と同じ食生活をしようとする人々は増え続ける一方だが、これらの人々を支えるだけの十分な穀物を生産する力は、地球にはおそらくない。
世界銀行や国連食糧農業機関(FAO)の穀物供給予測は非常に楽観的なものだが、それでも世界中の人々が、アメリカ人と同じ生活をするのに必要な穀物を生産できるとは、予測していない・日本政府が一九九五年後半に出した世界の食糧事情に関する評価報告は、小麦とコメの価格は二〇一〇年にはニ倍になるかもしれないと指摘し、世銀の食糧予測とはきっぱり快を分かっものだった。
世銀やFAOで農作物の需給予測を担当している経済学者は何年も、二〇一〇年までずっと穀物は余り続け、穀物価格は下落を続けると予測してきた。
しかし、日本政府の予測は、現在直面している自然の制約要因、例えば作物の肥料への反応の鈍化や主要な食糧生産地域での帯水層の枯渇、潅概用水の都市用水への転用、耕地の喪失など、特にアジアで顕著に見られるこのような制約要因を考慮に入れている。
この日本政府の報告書は、日本が最初に世銀の楽観的な予測から「決別した」ことを示しており、これで迅速な行動が必要であることが幅広い層にわかってもらえるだろう。
世界のあちこちで大量の穀物輸入が必要になり、食糧不足が続くと、「五八億の人間とわれわれが依存している生態系や資源の関係に、大いに問題あり!」という警鐘が鳴り響くだろう。
水不足の問題も絡んで、「安全保障」を再定義せざるをえなくなるのではないだろうか。
「水や食糧が不足すると経済の安定が揺らぐ。
これは軍事侵略以上に安全保障を脅かすものだ」ということが認識されるであろう。
森林は生態系の中核である。
水の循環を安定させ、土壌を侵食から守り、多くの植物や動物の生育地となり、さまざまな産物を提供する。
他の資源と同様、森林産物への需要も世界経済の拡大に伴って何倍にも増えてきた。
一九五〇年以来、材木の使用は二倍以上に、紙の使用は六倍に激増し、薪の使用も発展途上国の人口の増大につれて急増している。
一九九一年から一九九五年をみると、毎年平均一、一三〇万ヘクタールの森林が消失している。
三年ごとに日本の国土面積に等しい森林が、地球上から消えている計算である。
森が失われてダメージを受けるのは森林だけではない。
木々や植物の覆いがなくなると土壌は侵食され、地表の植物が減ると、降雨を吸収する能力も弱まって洪水が頻発することになる。
推定五億七、九〇〇万ヘクタール(日本の面積の一五倍)の土地が、森林消失によって直接的または間接的に劣化している。
地球全体で見ると、森林が失われることで地球温暖化の恐れがいっそう強くなる。
化石燃料の使用量は一九五〇年以来四倍に増え、また森林の消失によって自然が二酸化炭素を吸収する能力も損なわれていることもあって、炭素の排出が過剰になっている。
その結果、ニ酸化炭素の大気中濃度は、一五万年間で最高レベルまで上昇してしまった。
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